
ステルスブラック企業とは何か
― 見えない“働きづらさ”の正体 ―
企業のメンタルヘルスや人材定着を考える際、従来は「ブラック企業/ホワイト企業」という二分法で語られることが多くありました。 しかし実際の現場では、単純な善悪では整理できない状態が数多く存在します。
ここでは、企業の状態を構造的に整理したうえで、近年増えている「ステルスブラック企業」という状態について説明します。
企業の状態マトリクスで見る、4つの組織状態
このマトリクスは、縦軸を「無理・過負荷の有無」、横軸を「成長・将来性が見えるか」とし、企業の状態を4つに整理したものです。
グレー企業(無理がある × 将来は見える)
- 忙しさや負荷はあるが、なぜ頑張るのかが説明できる
- 裁量や学びがあり、経験が次につながる
- 成長実感はあるが、負荷の偏りが起きやすい
- 設計を誤るとブラック化しやすい不安定な状態
ブラック企業(無理がある × 将来も見えない)
- 責任・判断・感情対応が一部に集中している
- 「頑張り」で回ることが前提になっている
- 代替・分離・逃げ道の設計がない
- 学びや経験が次につながらない
ホワイト企業(無理がない × 将来も見える)
- 役割・責任・判断が明確に設計されている
- 不在や交代を前提に組織が回る
- 安定と成長が同時に成立している
- 従業員エンゲージメントが高い
パープル企業(無理はない × 将来も見えない)
- 働きやすくトラブルが少ない
- ルーティンが多くスキルアップしにくい
- 評価や期待値が曖昧で将来像が描けない
- 成長・キャリアアップの機会が限られている
負荷とやりがい、将来性は、本来トレードオフではありません。
ステルスブラック企業とは何か

ステルスブラック企業とは、表面的にはホワイトに見えながら、内部ではブラック企業と同様の構造が静かに進行している状態を指します。 その本質は、「見えない無理 × 仮設の将来」です。
主な特徴
- 物理的・心理的負荷が、いつの間にか特定の人に集中する
- 「無理しなくていい」と言いつつ、実態は頑張り前提で回っている
- 制度はあるが、休む・断る・代わることが現実的でない
- 経験を積んでも、評価や次の役割につながらない
なぜ問題が表に出にくいのか
ステルスブラック企業は、数値や制度上は問題が見えにくく、表向きは「ホワイト」「働きやすい」と評価されやすい傾向があります。 そのため、不調が個人の問題として処理されやすく、相談が遅れがちです。
結果として、燃え尽きや離職が突然起こる、管理職やキーパーソンが疲弊するなど、後から問題が顕在化します。
気づいた企業が考えるべき視点
- 誰が、どこまで、何を背負っているのか
- 本当に「休める」「断れる」「代われる」設計になっているか
- 経験や負荷が、評価や次の役割につながっているか
当事者ではない第三者の視点で整理することで、問題が大きくなる前に手当てすることが可能になります 。
産業カウンセリング・キャリアコンサルティングの役割
産業カウンセリングやキャリアコンサルティングは、単なる不調者対応ではありません。 個人の訴えを組織構造として読み解き、感情や違和感を設計課題として翻訳する役割を担います。
静かな違和感の段階で立ち止まることが、結果として企業と人の双方を守ることにつながります。
最後に
ステルスブラック企業は、「気づいていないこと」そのものが最大のリスクです。 このページが、自社や関わる組織の状態を見直す一つの視点になれば幸いです。
※ 本ページにおける「ステルスブラック企業」は、2019年の働き方改革関連法施行後、当社が2020年より企業支援の現場で位置づけている概念です。

産業カウンセリングとキャリアコンサルティング
産業カウンセラーとは
産業カウンセリングは、仕事や職場の人間関係などから生じるストレスや心の問題に対する カウンセリング(メンタルヘルスカウンセリング)にとどまらず、 産業社会における生き方の設計や、人事制度・組織の変化に伴う 職業生涯の再設計とそれに対応する能力開発を支援するための カウンセリング(キャリアカウンセリング)を含みます。
また、職場におけるカウンセリング・マインドの普及や啓発といった役割も担っており、 大きく分けて以下の三つの領域・機能を持つとされています。
産業カウンセラーは、 「人は誰でも、自らを維持し、強化しながら成長しようとする力を備えている」 という人間観に立ち、 働く人々が自らの力で問題を整理し、解決に向かえるよう援助する役割を担っています。
キャリアコンサルタントとは
キャリアコンサルタントは、キャリア形成や職業能力開発などに関する 相談・助言(キャリアコンサルティング)を行う専門家として、 平成28年4月より、職業能力開発促進法に基づく国家資格となりました。
企業をはじめ、需給調整機関(ハローワーク等)、教育機関、 若者自立支援機関など、幅広い分野で活躍しています。
キャリアコンサルティングを導入することで、次のような効果が期待されます。
・上司・部下間のコミュニケーションの促進
・社員の意識や職場課題の把握
・社員の定着促進
・社員の職業能力の向上
・業績の向上
・生産性の向上

最終更新日:2026年1月20日。


